いやー、
面白かった!久々に
ミステリーではなく、ヒューマンドラマのみを描いた作品でした。
それでも、全然面白いですね。
ミステリーじゃない東野圭吾は、白夜行や超・殺人事件くらいしか読んだことないですが、彼はこういう作風でも全然いけるますよね。
あの淡白な文章がまたたまらんのですよ……w
内容については、完全に物理の分野が根幹となっていましたね。
P-13現象。
ブラックホールの影響で、世界から13時13分13秒から13秒間が消失するというもの。
と、まあ詳しい説明は省きます。詳しくは本を読んで見てくださいね。
東野圭吾はこの作品で、
「人間」というものを全て表現したかったのではないでしょうかね。
苛酷な環境の中、どのようにして、そんな人間たちが手を取り合って生きていくのか。
今まで積み上げてきた全てを捨てなければならない選択を迫られたとき、人間はどう対処するのか。
人の綺麗な部分や醜い部分、それぞれの価値観の相違など、見事に描かれていましたね。
それは「世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になることもある。これはそういうお話です」 というキャッチコピーからもわかることですね。
また、私はこうも思うんですが、東野圭吾は、今ある人間社会は不測の事態に脆弱だ。だから本来あるべき自然と共存する社会に戻るべきだと、この本で訴えているようにもとれますよね。
あとは、平行世界での記憶は失ってしまう主人公たちですが、心の奥の奥に刻み込まれた感情というものは消えないというのも、暗に語っていましたね。
それは、最後の場面でよく描かれていると思います。
一つ疑問が残りました。
50章での、河瀬の生存について。
1回目のP-13現象のときは、1発目の銃弾によって殺されていた河瀬ですが、2回目のときには、1発目の銃弾はかわしている。
つまり、1回目の時点での死因を回避したということから、河瀬は揺り戻しによって現実世界へと戻ってきたということがわかりますよね。
しかし、2発目の弾丸が放たれている。
ここで、河瀬の生存はわからない。明かされていない。
河瀬は、いったどうなったのか?
私は、河瀬は死んだのだと思います。
そして、2回目のP-13現象によって、再び平行世界へと飛ばされたのではないかと考えています。
まあ、もちろん、2発目が13秒以内に撃たれたのならという前提のものではありますけど。
大月の元に電報がいっていないのは、河瀬がヤクザであるということ、大月の元に届いた知らせが速報にすぎないものということが考えられます。
ここんところ、正直どうなのかよくわからないんですよね。
読んだ方はここの考えを教えていただけると嬉しいです。
さて、今作「パラドックス13」が良く理解できなかったという人のために、私なりの解釈を載せておきます。
念頭においておくべきは、
P-13現象中の出来事は消失しているということ。
つまり、主人公たちはもともとは死んでいる。けれど死んでいないという逆説――パラドックスが生まれてしまい、それを解消するために作られたのが、送り込まれてしまった平行世界。
ここまでは小説のほうで明かされていますよね。
では、なぜ揺り戻しによって現実世界へと戻ったときに、死という出来事そのものがなくならないのか、という点。
これは、簡単なことで、出来事自体は決してなくならないからです。
上記の言い方を変えれば、出来事によって発生してしまった矛盾を解消するために生まれたのが平行世界です。
ちょっと間違った解釈の仕方かもしれませんが、主人公たちは、平行世界にて臨死体験をしていると捉えるとわかりやすいかもしれません。
つまり、臨死体験中にそのまま死んでしまったから、現実世界でも死んでしまったというわけです。
記憶が消えているのは、現実世界に戻ったとき、会ったこともない人や出来事のことを覚えていたとしたら、それこそ矛盾が発生してしまいますよね。
矛盾を解消するための平行世界が矛盾を生む。そんな本末転倒なことはありえないんです。
もう少し詳しくいうならば、平行世界での出来事は消えているからです。
ここでの矛盾は、平行世界の出来事が消えたんなら、なんで誠也たちは死んでいるのかということですが、
これは現実世界でもう一度死んでいるからです。
しかし、平行世界で生き残ったものたちは、1度目のP-13現象時点での死因を回避できている。
平行世界で生き残るか生き残らないかは、この1度目を回避できるかできないかにあるわけです。
つまり、平行世界での出来事自体は消えているが、それは確実に現実世界に干渉しているわけです。
そこは、最後の場面、冬樹と明日香の病院での対面時に描かれています。
冬樹は、明日香を好きだという気持ちを記憶は無いにもかかわらず、心のうちに残していることがわかりますよね。これが、干渉に相当すると考えてもいいと思います。
と、私はあまり物理に詳しくないですが、こんな解釈でこの作品を捉えています。
ざっくばらんに書いたので、いろいろと問題あるかと思いますが、見逃してやってください。
この「パラドックス13」ですが、かなり面白かったので、ファンはもちろん、新規の方も読んでみることをオススメします。
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テーマ:東野圭吾 - ジャンル:小説・文学